隠れ御曹司の愛に絡めとられて


……は? なに、急に!?


時刻は金曜日の夜9時すぎ。

美紀はきっと会社を出たばかりなのだろう。

耳元のスピーカーからは少し騒がしい音が聞こえて、彼女が家ではなく外からかけていることが分かる。

相変わらず仕事が忙しいみたいだ。

彼女の所属する法務部の仕事の詳しいことは分からないけれど、秘書課の私よりもずっと難しい案件を抱えているはずだと思う。

間違いなく私なんかよりも仕事の出来る女である美紀の事情聴取を乗り切るのは、なかなか難しいことが予想される。


「……いや、どう、と言われても」


言葉を濁す私……。

このあと美紀は彼女の仕事ぶりを表すようにズバズバと切り込んで来るだろうことは簡単に想像出来て、私は思わず身震いした。


『あのあと二人で仲良く朝まで、とか!?』


あながち間違いではない美紀の言葉に、私は思わずむせそうになる。


「そ、そんなわけ……っ!」

『だってさぁ。彼、亜矢のこと熱心に介抱してたし、亜矢だってまんざらじゃなさそうだったじゃん!』

「いっ、いやっ、そんなわけ、」

『はいはい、気づいてないのは本人だけ! で、あのあとどうなったの?』

「えっと……、べ、別に、なにも、」

『うっわ、慌て方が怪しいっ!!!』


ぐっ、と声が詰まる。

でも、朝帰りはともかく、多分彼とは何もなかった、と思う……、確証はないけれど……。