「あのえっと、先週、家に帰ったらこれがカバンの中に紛れ込んでることに気づいて……っ! あの、決して、盗ったわけでは……!」
「あ、そうだったんだ。あー、そう言えば亜矢さんのカバンの近くに置いてたから、落ちたのかも?」
「そ、そう、だと思いますっ。あの、返そうと思って、探してて……」
「うん、そっか。わざわざありがと」
「えっと、あの、返すのが遅くなってごめんなさい!」
「あはは、大丈夫。お仕事が忙しかったんだよね?」
「……いや、そうじゃなくて、えっと」
「うん……?」
仕事が忙しかったからではなく、私が方向音痴すぎて毎回迷子になってしまってこの部屋に辿り着けなかっただけだ。
けれどそんなことを言うのは、やっぱり恥ずかしすぎる気がして思わず説明するのを躊躇してしまった。
でもちゃんと正直に全部言った方がいいよね……。
「あの、私、実は、すごい方向音痴で……」
「え? そうなんだ」
「はい……。それで、なかなかここに辿り着けなくて……」
「あ、それで、探し回ってくれたんだ?」
「……はい」
「あー、だから、靴擦れ……」
「……はい」
「……ふふ」
「……!?」
「なんだ、そっかぁ。いや、笑ってごめん。違う違う、亜矢さんのこと笑ったんじゃないから」
「……はあ」
「いや、ほら、嫌われちゃったんじゃないかと思ってさ。あの日の朝、あんなだったし」
「……」
朝って……ほぼ裸で抱き合ってたこと……?
別に、キライだなんて、そんな風には思ってない。
私は正直に首を横に振った。



