「亜矢さんが会いに来てくれるって分かってたら、もっと美味しいものをたくさん用意しておいたんだけどなぁ」
「十分美味しかったし、お腹いっぱい食べたけど……」
思ったままをそのまま口にしてしまい、しまった、と口をつぐんだけれど、どう考えても全部口にしてしまった後だ。
私の言葉を聞いた男が、嬉しそうににこにこと笑っている。
しまった、なんか負けた気分。
迂闊すぎる。
そして、はた、と思い出す。
私がここに来た理由を……。
「あっ! あのっ……!」
「ん? なに?」
「あの、こ、これっ……」
私はカバンの奥からハンカチに包んでおいた腕時計を慎重に取り出した。
なんせこれは百万円もする腕時計だ、何か間違いがあってはいけない。
自分の手の平に乗せて、ハンカチをそっと開く。
「……あ、それ……」
「あっ、あのっ、これ、あなたので合ってますか!?」
「うん。僕の」
にこにこと笑みながら私と腕時計を往復する。
なんで、と言いたいんだろうな……そうだよね……、なんでお前が持ってるんだよって話しだよね?



