隠れ御曹司の愛に絡めとられて


それよりも、早くストッキングを脱いでしまわなければ彼が戻って来てしまう。

なるべく床を血で汚さないように注意しながら、私は慎重にストッキングを脱いだ。

靴擦れは思っていたよりもずっと重症な見た目をしていて、自分でも思わずギョッとする。

痛い、確かに患部も痛いけど、見た感じがなんかすごく痛い。

それもこれも私が方向音痴だから悪いんだけど……。


脱ぎ終えてソファに腰を下ろしたタイミングで彼が救急箱を手に戻ってきた。

タイミング良すぎて、どこかで見てたのかと思ってしまうぐらい。


「わ、やっぱり結構酷いね。痛かったでしょ?」

「……」


人間とは現金なもので、そう言われるとなんだか急に痛みを感じ始めてしまう。

それまではすっかり忘れていたのだ。

だってもう今日は彼に会うのは諦めていたのに、あんなタイミングで、会えたから。

良かった、会えた!って気持ちが大きすぎて、すっかり痛みが頭から飛んでた。

それにやっぱり自分の方向音痴すぎるところも内心ショックだったのもある。

いい大人が方向音痴で迷子だなんて、笑うに笑えないし。


しゅんとしてると彼は私が痛いのを我慢してるんだと思ったらしく、「痛かったね、つらかったね」ってまるで小さい子に言うみたいに慰められた。

……いや、私の方が年上なんですけど!

威厳はびっくりするぐらい全くないけどね、迷子常習犯だし。