「どうぞ、上がって」
「お、お邪魔します……」
もう一度遠慮がちにそう言って、パンプスを脱ぐ。
と同時に、「えっ、亜矢さんっ!!」と焦ったような彼の声が聞こえて私は驚いて彼を見上げた。
する彼の視線は私のパンプスを脱いだばかりの足に注がれていて……。
歩き回ったからすっかり靴擦れになっていて、かなり血が滲んでしまっている。
私が声を漏らすよりも前に、彼はサッと私を横抱きにした。
「えっ!? ちょっ、あの……っ!」
「亜矢さんこんなので歩いてたの!?」
「あのえっと……、床、汚しちゃってごめんなさい」
「そんなこと言ってるんじゃなくて! 床なんて拭けばいいしっ。こんな足で歩かせてごめんね? 痛かったでしょ?」
私を横抱きにしたままリビングへ向かい、ソファへとそっと下ろす。
「救急箱取ってくるから、ストッキング脱いでて」
「えっと、あの、絆創膏持ってるからそれで大丈夫……」
「だめ。ちゃんと手当てしないと、ばい菌入ったらどうするの?」
「大丈夫、大丈夫っ」
「だめ! 戻ってくるまでに準備しておいて。ね?」
眉間に皺を寄せて真剣に怒られてしまい、私は「……はい」と頷くしかなかった。
私の返事を聞いた彼は少し表情を緩めて、救急箱を取りに奥へと消える。
思いもよらぬ展開に、私は思わずため息をもらした。



