「今からちょうど晩ごはん作るところだから、亜矢さんも一緒に食べよ?」
「……」
「……やだ?」
問われて、空腹にはあらがえず、私は「う……、イヤ、じゃない……」と返した。
だってお腹空いた。
じゃあ行こっか、と言って彼は私の手を握り歩き出す。
振りほどくわけにもいかず、仕方なしにそのまま彼について行く。
こうやってすぐ隣り合って立つと、彼が思ったよりも背が高いことが分かる。
私の身長が約160センチ弱。
5センチほどヒールのあるパンプスを履いているので合計で165センチ近くある私が彼の顔をしっかり見ようと思うと、少し見上げなければいけない。
推定180センチほど、と言うところか。
チラリと彼の顔を覗き見ると、私の視線に気づいたのか、「ん?」と小首を傾げて柔らかく微笑む。
なにその顔、可愛すぎなんだけど。
大人の男にこんなに何度も“可愛い”を使う日が来るとは思わなかった。
けれどその形容が一番ピッタリなのだから仕方がない。
「どうしたの?」
「……なんでもない」
緩く首を左右に振って、私は彼の顔を不用意に見るのはもうやめようと心に誓った。



