隠れ御曹司の愛に絡めとられて


確か、あの日――初めて彼に会ったあの時も、そう思った覚えがある。

あの時はかなり酔っていて思考が定まらなくて思い出せなかったけど……。


そんなことを考えていたら、彼の手がスッと私の顔に近づいて――。


「……っ」


彼は指先で、私の瞳からこぼれ落ちた涙をそっと拭った。

その指先はとても温かくて、優しくて……。


――ああ、思い出した……、彼は……。


「……亜矢さん」


彼は……、似てるんだ……。


「亜矢さん……」


彼が、ゆっくりと、私を抱き締めた。


「亜矢さん、もしかして……会いに来てくれたの?」


彼の囁くような優しい声が、すぐ耳元で聞こえる。

彼の暖かい体温が私を包み込む。


――やっぱりこの感覚、知ってる……。


懐かしさに思わず彼の背中に腕を回してぎゅうと抱きつくと、耳元でふふと笑うのが分かった。

その息で私の耳元の髪が揺れ、少しくすぐったい。

そんな感覚も、久々で……。


――ああ、やっぱりそうだ、そっくりだよ。

優しくて、暖かくて、大好きだった。

実家で飼ってたゴールデンレトリバーの、“メープル”――彼に、似てるんだ……。