――さんざん迷いに迷った挙げ句、なんとか家に辿り着いたのは夜8時を過ぎた頃だった。

あの後しばらく自力でなんとか頑張ろうとウロウロしたけど結局道は分からず、恥を忍んでお店の人や通りすがりの人に駅までの道を尋ね……。

最終的には心優しい女の人に駅まで連れて行ってもらったのだった……。


いい大人なんだし、さすがにそろそろ方向音痴を克服したい。

でも……地図の読み方がさっぱり分からない。

平面の地図と実際の道って、ぜんっぜん違うのよ、私にとっては!!!


もちろん音声で道案内をしてくれるアプリを使ったこともある。

けれど、私はその通りにしてるつもりなのに何故かやっぱり道に迷ってしまい、結果、アプリ側が混乱したのか、とんでもない道を教えられたりして全くうまくいかなかった。

音声ナビさえも混乱させるほどの伝説の方向音痴――それが私だ。

……偉そうに言う話ではないから、出来れば本当に内緒にしておいて欲しい。


帰巣本能のある鳥とか犬とかが本当にうらやましいと思う。

彼らの百分の一でもその能力が私にあれば、きっと目的地に到着することが出来るのに……。


とりあえず今日が土曜日で良かった……。

また明日出直そう、そして日曜日の明日こそはきっと、彼の家を見つけてこの腕時計を返すんだ。

心に固く誓い、私は今日という日を終えた――。