「……え、待って、ほんと……」


思わず声に出してつぶやくと、私を抱き締めていた男が、「ん……」と声を立てる。

そして、ゆっくりと瞼を開いた。


……うわ、男のくせに、睫毛なっが。


動く睫毛を目で追ってしまったせいで、間近で目が合った。

男はまだ少し眠いのだろうか、少しとろりとした目で私を見つめている。

その表情が思いのほか色気をはらんでいて……。


起きたてでこのクオリティ、なんだかむかつく。


「ん……、起きてたんだ……? ふふ、おはよ」

「おは、よう……」


不意打ちの朝の挨拶に、思わず私も応えてしまったけど……。

いや、ちがうちがう、おはよ、じゃないんだよ。


「……大丈夫?」


男はそう言いながら、私の頭を優しく撫でる。

その手が妙に心地よくて……。


「だ、だいじょう、ぶ……、い、った……」


うん、と首を縦に振ろうとして、二日酔いらしい頭がズキリと痛み、思わずうめく。

それを見た男は私を抱き締めていた腕をほどき、上体を起こした。