「ごめーん、お待たせ」
追加招集された代打の男が、やっとご登場。
そのおかげでもう一度簡単な自己紹介をしなきゃいけなくなり、「野村亜矢です。隣に座ってる美紀とは同期です」と、さっきと一言一句違わずに口にしてニッコリと愛想笑いを浮かべるところまで安定のワンセット。
酔いが回ってるおかげで、きっとさっきよりずっと微笑めてると思う。
我々先発の自己紹介を一通り聞いた“代打くん”は、「遅くなってすみませんー。急な残業が入ってしまって」と深々と頭を下げたのち、名前を名乗った。
「 です、飲食店勤務です。よろしくお願いします」
飲食店勤務……?
って、もしかして、女の子の客と楽しくおしゃべりするタイプのお店だったりとかしないよね?
ホスト、じゃないよね?
だって顔もやたらと綺麗だしさぁ。
って言うか、ごめん、名前、聞いてたけどきみの仕事のこと考えてたから全部抜けた。
覚える前にうっかり完全に。
酔いすぎかなぁ、あははー。
まぁいっかぁ、もう会うこともないだろうし。
私、ホストとかのチャラい男はお断りだから、もう会いたくないし。
もし万一何か言われたら、ごめん私ひとの名前覚えるの苦手でー、って言っとけばいいんだ。
秘書課の人間がそれだとほんと仕事にならないから嘘だけどねー。
ほら、嘘も方便って言うじゃーん?



