子供みたいな事を言いながらも、カエデくんはゆっくりと上体を起こす。

先日私のせいで休ませてしまったし、これ以上彼の職場に迷惑をかけるのは本意じゃない。


一糸まとわぬ姿で抱き合ってそのまま眠っていたから当然彼の上半身は何も身につけていなくて、細身ながらも均整の取れた身体が私の隣で惜しげもなく晒されている。

昨夜のことを思い出したことによってまた私の身体が熱くなりそうになって、私は慌てて彼の身体から目をそらした。

それを不自然に思われないようにと私も上体を起こし――かけたところで、トン、と肩を押されて、私の身体が再びベッドへと沈む。


「ちょ……、カエデくんっ」


私をベッドへ押し倒したのは当然カエデくんだ。

横たわっている私の顔の横に両手をついて私を見下ろしている彼は、口元に緩い笑みを浮かべていて……。


「ねえ、ちょっと、」


文句を言ってやろうと開いた口は、あっさりと彼に塞がれてしまった。

言葉を紡ぐはずが、侵入してきた彼の舌に絡め取られて、湿度の高い淫靡な音と、急激に速まった心臓の拍動に対応するために空気を求める荒い呼吸へと取って代わられる。

昨夜たっぷりと愛された私の身体はすぐにその熱を思い出してしまい、ただ荒く呼吸をしていただけだったものが甘い吐息に変わるのにそれほど時間はかからなかった。


彼が私の変化に彼が気づかないわけはなくて、私の唇を解放したかと思うと、すぐに私の耳元へと顔を埋める。