――「……ごめん亜矢さん、おなか空いてた、よね……?」
互いの呼吸がようやく落ち着いた頃、ベッドの中で私を抱きしめながらカエデくんが私に問いかけた。
そう言えば帰って来てすぐに抱き合ったんだっけ……。
夢中ですっかり忘れていた。
「あの時は空腹なんかより、カエデくんが欲しかったから……」
思ったままを口にすると、嬉しそうに微笑んだカエデくんに優しく口づけられた。
「……ほんと、亜矢さんってズルい」
「え……? どこが? 狡いのはカエデくんでしょ?」
だって、いつもふわふわ笑ってるくせに。
ベッドの中では全然別人。
優しく笑ってるいつものあの表情は、本当は全部誰かを騙すためのものなんじゃないの……?
ジロリと睨むと、やっぱりもう私を騙す準備ができていて、ふわりふわりと笑っている。
そんな風に騙す気満々っぽい彼の頬に手を伸ばし、むにゅ、と頬をつまむ。
それでもなお笑ってる彼に、今度は私から軽く口づけた。
唇が離れると、カエデくんが少し不服そうに口をとがらせる。
「……ほら、やっぱり亜矢さんの方がズルいっ」
「違うでしょ、カエデくんがそんなズルい顔して笑ってるからでしょう?」
「そんなこと言って……。また襲っちゃうよ?」
「もう……っ、ばかっ」
彼の肩のあたりをポカリと叩く。
やっぱり「ふふっ」と笑ったカエデくんは「晩ご飯の用意してくる」と言ってベッドからスルリと抜け出した。



