お互いぎゅっと抱きしめ合って。
ああ、しあわせだな、って浸っていると、カエデくんがひょいと手を伸ばしてエレベーターの【開】ボタンを押した。
滑らかに開いた扉をくぐり抜け、カエデ君に手を引かれてエレベーターを降りて玄関内へと入る。
靴を脱ぐ間もなく再び抱き寄せられて、優しく口づけられた。
私が彼の背に腕を回してぎゅっと彼を抱きしめると、優しく触れるだけだったキスが、すぐに深く濃厚な口づけへと変わる。
舌を絡め取られ、呼吸すら奪い尽くしそうなキス。
耳に聞こえる激しい息づかいは、私のものか、彼のものか……。
どちらからともなく靴を脱いで、部屋へと上がる。
私が向かおうとしている場所も、彼が向かおうとしている場所も、きっと同じ……。
コートとジャケットを脱いでもつれるように二人してベッドへと身を投げ、再び口づけ合う。
不意に彼の唇が離れて、私の上に覆い被さるようにしている彼を見上げると、そこには、いつもの可愛らしく笑う年下の子とは全く違う、艶めかしくて魅惑的で、あまりにも非日常的な色香を振りまく妖艶な男が口元に笑みをたたえながら私を見下ろしていた。
「……カエデ、くん……」
堪らず彼の名を呼ぶと頭上の男が小首をかしげ、緩くウェーブしている柔らかそうな髪がふわりと揺れた。
この男は、どこまでも、私をくらくらとさせる天才だ。



