「ガキに良いように遊ばれて捨てられるのがオチだぞ!?」
「……カエデくんの事を悪く言わないでよ!! 彼はそんな人じゃない!! それに、もしそんな風に捨てられたとしたって、私はっ、カエデくんの事が好きなのっ!!」
「……っ、クソ……っっ!!」
孝治が、私を掴んでいるのとは逆の手を拳に握った状態で振り上げているのが見える。
……殴られる!?
そう思って身体を引こうとしたけど、孝治に腕を強く掴まれたままなので、それは不可能だった。
孝治の拳が振り下ろされるのが見え、私は殴られる覚悟をしてギュッと目を瞑る。
このまま私が殴られて孝治の気が済むのなら……、そう思って……。
けれど、孝治が振り下ろした腕は私には当たることなくて、私を掴んでいた孝治の手が解かれる。
驚いて目を開けると――そこには孝治の振り下ろした手を左腕で受けて私を庇うカエデくんの姿があって……。
「カエデくん……っ!!」
「……っ、亜矢さん、大丈夫……?」
「私は、大丈夫……、それより、カエデくんの方が……っ」
「大丈夫。亜矢さんがなかなか来ないから、心配しちゃった」
そう言っていつものふんわりとした笑顔を私に向ける。
孝治の手が振り下ろされたと思われる瞬間、鈍い音がした。
孝治の拳がカエデくんの腕に思いっきり当たった音だったのだろう。
カエデくんは笑っているけど、きっととても痛いはずだ。



