私の言葉を遮るように続けられて、私が言おうとしていたはずのセリフを全く違う言葉にすり替えさせるのは、彼の得意技らしい。
私のために用意しただなんて軽く言ってくれるけど、ここまで揃えるのにどれだけお金がかかってるだろうか。
あまりブランドなどに詳しくない私でも、ここに揃えられた洋服がとても高級なものだと分かる。
間違いなく〝ハイブランド〟と言うカテゴリに入るだろうものばかりだ。
それらをたくさん揃えた上で、〝全部亜矢さんのために用意した〟なんてサラッと言ってのけてしまう彼の思考と財力は、いったいどうなっているんだろう。
すっかり身支度を終えて「じゃあ行ってきます」と口にすると、カエデくんが「え?」と首を傾げた。
驚くところだったかな?
会社に行く支度をしてたんだから、間違ったことは何も言ってないはずだ。
「あのね、亜矢さん」
「え、なに? だって私、今日は出勤するって、」
「車で送って行くに決まってるじゃん!」
「でも、」
「昨日体調不良でお休みしたのは誰ですか?」
「うっ……、私、です……」
「今日はおとなしく僕に送られて下さいっ」
「……はい」