用意してくれた朝食を食べ、出勤のための身支度をする。

「今日はどの服にする?」と尋ねられて、私は眉根を寄せた。

ここは彼の家で、本来なら彼の持ち物しか存在しないはずだ。

それなのに、ベッドルームに繋がるこのウォークインクローゼットには私のために用意されたらしい洋服などが数多く収納されている。

しかも、見るたびにその量が明らかに増えているのだ。

最初はほんの一角だけだったのが、今では半分ほどが女物の衣類が占めている。

一体いつの間にこんなことに……?


カエデくんにすすめられるままにスーツに身を包み、アクセサリーを身につける。

オフィスでつけても大丈夫な控えめなデザインのネックレスとピアスは、とても品が良い。


「……ありがと、借りるね」


私がそう言うと、カエデくんは「ん?」と小首を傾げた。


「これ、全部亜矢さんのために用意したものだよ?」

「えっと、でも……」

「……ごめん、好みじゃなかった?」

「ち、違う、そうじゃなくて! どれもとっても素敵だし、正直、すごく好みなんだけど、」

「ふふ、良かった。遠慮せずに使ってね?」

「……ありがと、う」