「わわっ、亜矢さんっ、大丈夫!?」
とっさに私を支えてくれたのは、メープルくん――じゃなかった、カエデくん、だ。
心配そうに私を覗き込む彼の瞳に私が映っているのが見えて、ああ、やっぱり彼は距離が近いな、なんて考えている間に、さっきとは違う浮遊感に襲われた。
横抱きにされたのだと気づいて慌てたけれど、身体がだるくて重くて……。
「あの……っ」
「今日は車で来てるから」
どうやら会社のビルのど真ん前に車を止めているらしい。
助手席へと運ばれ、私はぐったりとシートに身を預け、ただただ浅い呼吸を繰り返す。
あまり見覚えのない車内に、いつもの車じゃないことにうっすらと気づいたけど考えるのも億劫で、思考がまとまらない。
視界が相変わらずグレーがかっていて、ぐるぐると目が回る。
とうとう指一本動かせなくなって、私はそのまま意識を手放した――。



