美紀は心底おかしそうにクスクスと笑うと、「もう、しょうがないなぁ」と言いながらも、教えてくれた。
――イマイ カエデ
「……確かそう言ったと思う」
「イマイ、カエデ……。分かった、ありがとう」
「どういたしまして。教えたお礼に、何か進展があったらちゃんと報告してよね?」
「……うん、まぁ」
「約束だよーっ。じゃあ私、仕事に戻るね」
「あ、うん。ごめんね忙しいのに。ありがと」
「どーいたしまして。じゃ、続編、待ってるねーっ」
美紀はバイバイと元気に手を振って去って行った。
続編って……。
……カエデくん、か。
ふぅん、可愛い名前。
って言うか、奇遇だな、と思う。
だって、“メープル”って、カエデって言う意味だから。
犬のメープルの名前の由来は、彼の毛並みがメープルシロップの色に似ていたから、私がそう名付けたのだ。
本当に、奇遇。
――カエデくん。
心の中でそっと唱えてみる。
なんだかまだ違和感があるけど、慣れるしかない。
カエデくん、カエデくん、カエデくん……。
私は心の中で何度も何度も彼の名前を唱えた――。



