隠れ御曹司の愛に絡めとられて


「亜矢~っ、こっちで一緒に食べよう! ちょうど聞きたかったんだよね、あの話!」

「えっと、“あの話”、とは……?」

「やだぁ、しらばっくれちゃって。合コンの、その後よ~」

「あぁ……」


やっぱりそう来ましたか……。

覚悟を決めて、美紀の前の席に座る。


「で? あの後、あの子とどうなったの?」

「単刀直入だね」

「だって、時間は有限だし」

「そりゃそうだけど……」


美紀は相変わらず仕事が忙しいらしい。

私と会わなければきっと、サッと食事をしてパッと仕事に戻って行ったんだろう。

ほぼ食べ終わっている美紀が私のために時間を割いてくれていることが分かってるから、私も、ざっくりとかいつまんであの日のことを話すことにした。


「実は……」


朝起きたら半裸で同じベッドで寝ていたこと、彼の腕時計がバッグに紛れ込んでいるのを知らずに持って帰ってしまったこと、彼の家を探し回ってやっと返せたことを話す。

その後何度か会ったことも……。


「あらら、そんなことになってたんだ?」

「うん……」

「……で? どうして亜矢はそんなに浮かない顔をしてるの?」

「それが……実は、彼の名前、覚えてなくて……」

「ええ?」

「ねえ美紀、彼の名前、覚えてない……?」

「あはは、確かにあのときの亜矢、興味なさそうだったもんねぇ」

「うん……」