隠れ御曹司の愛に絡めとられて


彼の家に着くと、すでに美味しそうな和風出汁の匂いがしていて私の現金なお腹がグーと鳴る。

何度か同じ事を繰り返しているからさすがに彼も慣れたもので、私のお腹の音を聞いても何も言わなくなったどころか嬉しそうに「ご飯出来てるよ~」と言うようになった。

なんだか完全に餌付けされてる……。


彼がお味噌汁やおかずを温め直してくれている間に、私はスマホを取り出して着信をチェックする。

やっぱりたくさんのメッセージと通話の着信があり、思わず身震いした。

なかなか諦めてくれなくて、本気でうんざりする。


「……大丈夫?」

「……え? ああ、うん、大丈夫」

「何かあった?」

「ううん……何もないよ」

「ほんとに?」

「うん、ほんとほんと」


いつの間にか大きなため息をついていたらしく、また彼に心配されてしまった。

だめだな私。

もっとしっかりしなくては。

スマホがマナーモードになっていることを確認してポイとバッグの中に放り込む。


「今日も美味しそうだね」

「ふふ。分からないよ? 今日はまずいかもだよ?」


まずいわけがない、見た目から既に美味しそうだ。

すごいな、料理男子。

私なんてどれだけ努力してもこんなに綺麗な見た目に調理できないし、味だって酷いものしか作れないのに。


私のために並べてくれた料理を前に、しっかりと手を合わせて「いただきます」とつぶやく。

目の前にはにこにこ笑ってるメープルくんの顔があって、なんだかこれが“しあわせの縮図”なんじゃないかと思ったりしてしまう。

どうかしてる……。