都会の電車は次々とやって来るので、私たちがホームに着くのと同時ぐらいに電車がホームへと滑り込んでくる。
ホームも電車も混み合っていて、東京に出て来てもう十年近くになるけど人の多さには相変わらず慣れない。
朝のラッシュほどではないけどそれなりに混んでいる電車に乗り込んで、今日も酸素の薄さにうんざりする。
たくさんの人が乗り込んできたことで、私たちは反対側の扉の前まで追いやられててしまった。
身動きが出来ず、しかも、どこにも掴まる所がない。
「亜矢さん、大丈夫?」
「うん……」
「僕に掴まってていいよ」
「……大丈夫」
「じゃあ、僕が亜矢さんを捕まえとく」
「……は?」
言われた意味が分からず顔を上げると、満足げに微笑んだ彼の左手が私の腰へと回された。
向かい合わせに抱き寄せられた状態で電車が動き出してしまう。
「えっ、ちょっとっ」
「んー?」
「この手は何?」
「ええ? だって、電車が揺れるからね。危ないから」
「大丈夫だってば……」
むしろ、この状態の方が全然大丈夫じゃない、危なすぎる。
だって、身体が密着してしまう。
よくない、精神衛生上、とてもよくない……。



