好き? 私を? キミが?
そんなわけない、だって彼には格好悪い所ばかり見せてるし、そもそも私たちはつい先日合コンの場で出会ったばかりだ。
もし好意を持ってくれてるのだとしたら嬉しくないわけじゃないけど、仮にそうだとしてもまだ一緒に住むレベルの付き合いにはない。
と言うか、えっ、私の気持ちは無視?
私は彼のことを好きだなんて言ってない。
好きかどうかさえ分からない状態なのに。
「ふふ、まあ一緒に住むかどうかはともかく、美味しいもの作ってあるから、一緒に食べよ?」
呆気にとられながらもグルグルと考え込む私に、彼がそう声を掛けた。
美味しいもの、と聞いて、私のお腹がグーと鳴る。
うぅ、私のお腹め……。
「食べたら、亜矢さん家に車で送っていくから。……今日のところは、ね」
そう言って私の返事を聞かずに、彼の家の方面のホームへと私の手を引いて歩き始めた。
私はもう抵抗するのを諦めて、彼に手を引かれるまま。
それに気づいた彼はちょっと得意げな顔でにこにこしている。
なんだかんだ言って結局彼の思うつぼなのが悔しくて繋がれた手を解こうと手の力を緩めると、それを察知したらしい彼が手にギュッと力を入れて放してくれない。
ジロリと睨んだけど相変わらずのふんわりとした笑顔で返されて、結局私の右手は返って来なかった。



