隠れ御曹司の愛に絡めとられて


「あ。ふふっ、ごめん、忘れてた」

「……何を?」

「じゃーん! おやつとデザートも付きまーす!」

「……」


ねえねえ、どう? と繋いだ手を揺する。

え、キミ、成人男性だよね?

なんかだんだん子供を相手にしてる気分になって来たよ……。


「一緒になんか住みません」

「えーっ、なんで!?」

「いや、なんでって……。だって、私たち別に一緒に住むような関係じゃないし」

「え、だったらどう言う関係なら一緒に住んでくれる?」

「ええ? えっと……」


一瞬真剣に考えてしまったけれど、よく考えたら一緒に住む前提なのはおかしい、絶対に。

危ない、うっかり彼の口車に乗せられてしまうところだった。

にこにこしてるメープルくんをじろりと睨んで、「一緒になんか住めるわけないでしょっ」と私が言うと、彼は「えー、なんでー?」と悲しそうな声音でしょんぼりと項垂れた。

思わず罪悪感みたいなものが涌き出てきてしまうから始末が悪い。


「ねぇ。一体、何考えてるの?」

「何って? 普通に、好きな人と一緒に住みたいなーって考えてるんだけど?」


あっさりとそう言いきられてしまって、言葉をなくす。