隠れ御曹司の愛に絡めとられて


今日も目一杯、しっかりと働いた。

昨晩は久々によく食べよく眠ったから、仕事に集中できた。

今朝は車で送ってもらったおかげで満員電車に揺られることがなかったのも大きいかもしれない、東京の通勤電車は異常なほどの混み具合だから。

……別れ際の頬へのキスは、特に効果なかった、多分。


気が重いけれど、帰る前にスマホの着信履歴を確認する。

案の定、孝治からのメッセージや着信履歴がたくさん表示されていた。

ああ、最悪……。


ひとつひとつ他の人からの連絡が含まれていないかを確認していると、ひとつだけメープルくんからのメッセージがあった。

慌ててそれを選択する。


【仕事が終わる頃に、会社の前で待ってます】


……ええっ?

予想外の内容に驚いて、大慌てでバタバタと帰り支度をする。

私の隣の席でのんびりと帰り支度をしている若月ちゃんに「ごめんっ、先に出るね! お疲れ様!」と声を掛けて、エレベーターへと飛び乗った。


多くの社員が退社するこの時間は一階に着くまでにいくつもの階に止まるし、案外時間がかかる。

自宅マンションのエレベーターもゆっくりだけど、違う意味でこっちもなかなか一階に到着しない。

そわそわイライラしながらもやっと一階に到着し急ぎ足でエントランスをくぐり抜けると、エントランスを出てすぐの所で、いつも通り穏やかな笑顔の彼が待っていた。