隠れ御曹司の愛に絡めとられて


孝治からの頻繁な連絡が思ったよりもストレスになっていたらしく、ここ数日食事があまり美味しく感じられなくなっていた。

料理が出来ないから結局コンビニやスーパーでお弁当や総菜を買って帰るしかないのに、そうするとどうしても私を責める孝治の言葉を思い出してしまい、途端に食欲が失せてしまって……。

寝る時も嫌な夢を見ることが多くて、結果ほとんど眠ることが出来ずに朝を迎えてしまう。


そんな日が続いていたからか、昨晩はメープルくんの手料理で満腹になって、彼が片付けをしてくれている間に眠ってしまったらしい。

……恥ずかしい。

思えば私は彼に恥ずかしいところばかり見られている気がする……。


そんな風に昨晩のことを思いだしていると、後輩の若月ちゃんが出社してきた。


「野村さん、おはようございます。今日はいつもより早いですね」

「あ、若月ちゃん、おはよー。ちょっと、ね……」

「今日のスーツ、似合ってますね! すっごく素敵です!」

「あ、あはは、ありがと」


私が選んだものではなく、彼が――メープルくんが用意してくれたものだ。

デザインが素敵なだけでなく、私の体型にとてもフィットしていて着心地が良い。

彼がパリ土産でくれたブローチがとても合いそうだと思う。

家に帰ったら合わせてみよう……。


今日もしっかり働くぞ、と気合いを入れて、仕事モードへと切り替えた――。