「あの、私、会社に……」
「ああ、うん、そう言うと思った。じゃあシャワーの前に服だけ用意しよっか。こっち来て~」
手招きされるままに彼についていくと、寝室の奥にあるまだ開けたことのない扉の奥へと連れて行かれる。
そこはウォークインクローゼットになっていて、彼の服が綺麗に収納されていた。
その一角に、何点か女物のスーツやワンピースが掛かっている。
「ここにあるもの使ってくれる? 下着類はこの引き出しに入ってるはず。足りないものがあったら言って?」
「……え、あの……?」
「あ、サイズは多分大丈夫だと思うんだけど……」
「え?」
「前のスーツのサイズを参考にして揃えてあるから」
「……ええ?」
一瞬、誰か他の女の人のために置いてあるものかと思ったけど、そうではないってこと?
え、下着も、って。
あ、もしかして見ただけでサイズが分かっちゃうとか言うアレ?
プレイボーイな男だとそう言うのすぐ分かっちゃう感じ?
……なんかもやもやする。
深く追求すると自滅しそうなので、引き出しをサッと開けてパッと手に取る。
スーツとブラウスも一番手前のものを取り、両手に抱える。
「あの、お風呂、お借りします……っ」
私の言葉に、「うんどうぞ。朝食、用意しとくね」と返して、彼は扉の向こうへと消えていった――。



