隠れ御曹司の愛に絡めとられて


「あ、グラスはひとつで良いよ。僕、車で来てるから」

「あー、了解」


そっか、車なら飲めないね。

なんか自分だけ飲むのもなぁ、と思ってると「車で来るんじゃなかったなぁ」なんて言ってしょんぼりしてる彼。

思わず、車はまた取りに来ればいいじゃん、なんて言いそうになって、慌てて口をつぐんだ。


食べ物を全部ソファ側のローテーブルへと運んで床に腰を下ろすと、彼も私の隣へやって来て、同じように床へと座る。

なぜ彼はこんなに触れそうなほどの距離に座ろうとするのか、理解に苦しむ。

私が少し離れると、なぜかまたぴったりと身体を寄せてくる。

ジロリと睨んだけれどニッコリと微笑みで返されて、私は彼から距離を取ることを諦めた。


ビールをグラスに注ぎ、「いただきます」と言って彼の作ってくれた料理を口へと運ぶ。

予想に違わぬ美味しさで、これはほっぺが落ちそうだ……。


「お味はどうですか?」

「……うん、すごく美味しいっ」

「ふふ、良かった」


私の隣でふわふわ笑ってて、やっぱり今日も可愛い。

その笑顔を見てるとなんだかとても安心してくるから不思議だ。

ビールと料理を往復しながらそんな事を考えてしまう。

まだ一本目の缶が空になったばかりで、酔うにはあまりにも早い。