隠れ御曹司の愛に絡めとられて


そう来たか。

けれども残念ながら私はさっき言ったような理由から料理を全くしないので、調理器具だけは一応あるけど、食材が何もない。

いや、何も無いことはない、卵とレタスとミニトマト、あとはチーズぐらいなら入ってる。

調理しなくてもそのまま食べられるものばかりだ。

でもこんなものでは何も作れそうにない。


「あのね……、実は、冷蔵庫に何もないんだよね……」

「あ、そうなんだ? んー、ちょっと見て良い?」

「う、ほんとに、空っぽだよ……?」

「うんうん、大丈夫。じゃあ拝見しますー」

「……はいどうぞ……」


――と言うわけで、なぜだかメープルくんがあり合わせの材料でぱぱっと料理をしてくれて……、あっという間にビールやワインに合うおつまみが出来上がった。

しかも私がほとんど手をつけられなかったから揚げ弁当や総菜をリメイクしてくれて、全く無駄がない。

そのテキパキとした動きは、昨夜のビーフシチューが彼の手によるものだと理解するには十分だった。


うわ、料理男子かぁ……。

ますます勝てる気がしない。

別に何も勝負なんてしてないけど。

そんなことを考えながら、食器棚のビール用のグラスへと手を伸ばす。