隠れ御曹司の愛に絡めとられて



「お邪魔しまーす!」

「……はい、どうぞ……」


どうしてこうなるのか……。

目の前には、私の部屋の玄関で靴を脱ぐメープルくんの姿がある。

にっこにこの笑顔だ。

会いたいって言うから、つい、「いいよ」なんて軽く言ってしまった私が悪い。

だってまさか、私の部屋で会うことになるなんて思いもしなかったから。

……仕方ない、うっかり言ってしまった自分が悪い。


「えっと、適当に座ってて。コーヒーでいい? インスタントしかないけど」

「はーい。亜矢さんが入れてくれるなら何でも飲みます」

「……」


調子が良すぎる彼を、どこから突っ込めば良いのか分からない。

とりあえずお湯を沸かす準備をする。


「亜矢さん、ケーキどっちがいい?」

「あー、別にどっちでも……」


どっちでもいいい、と途中まで言いかけ、にこにこ笑顔でケーキを見せながら「どっち?」と首を傾げている彼……。

その笑顔にやられそうになりながら、「じゃあ、こっち……」と指さした。


嬉しそうに笑う彼の姿に、どうしても犬のメープルが重なる。

あの子も、構ってあげるといつも嬉しそうにしっぽを振ってたっけ……。

そんな姿が愛らしくて、よく撫で回していた。

懐かしい……。