実は私は、料理が決定的に出来ない。
いわゆる“メシマズ女”なのだ。
いや、不味いだけならいいけれど、レシピ通りに作ったつもりでも丸焦げになったり、カチカチだったりドロドロだったりと、食べ物の体をなしていない場合が多い。
味だってびっくりするぐらいまずくて、自分でも食べられないぐらいのものしか出来ない。
学生の頃からそうなので、調理実習では皿洗いしかしたことがない。
レシピ通りにやってるつもりなのに、一体何が違うのか……。
そんな私だから、孝治に手料理のひとつも満足に作ってあげることが出来なかった。
外でデートをしている時は外食だからいいけれど、たまには家でのんびりしようかってなった時に何も作ってあげられなかった。
孝治の前でも何度かトライしたけれど結局ひどいものしか出来上がらなくて、それ以降孝治の前では一度も料理をしていない。
もちろん一人で何度も練習したけど、ちゃんと食べられるものになったことはほとんどなかった。
「――だからいつも振られるのかなぁ」
男が女に求めるのは、“家庭的”なこと。
料理が出来るとか、家事が出来るとか、子供が好きとか……。
「わ、私だって、美味しいもの、作りたいわよ……っ」
ひとりつぶやき、情けなくて、悔しくて、思わず涙が滲む。



