孝治とは大学時代にゼミが一緒だったことがきっかけだ。
とは言ってもその頃は個人的に話をしたことはほぼなかったけれど。
連絡先を交換したこともない、ただゼミが一緒だっただけの関係が変わったのは大学を卒業して随分経った頃――今から一年ほど前のこと。
私がたまたま友人と入ったカフェに、孝治がいて……。
気づいて声を掛けてきたのは孝治からだった。
「久しぶり」って挨拶をして連絡先を交換して。
その日のうちに孝治の方から連絡があって、久しぶりに大学時代の話をしたいから、と言われて会ったのが始まりだった。
こう言うことを自分で言うのもアレだけれど、当時の私は割と途切れることなくつき合ってる人がいた。
けれども、たまたま孝治と再会した時は振られたばかりで……。
「俺、ずっと野村さんのこと好きだったんだよね」
孝治のそんな一言で気をよくした私は、続けざまに彼が「とりあえず俺とつき合ってみない?」と言う言葉に、首を縦に振ったのだった。
それが間違いだったとは思っていない。
孝治と一緒にいると普通に楽しかったし、趣味や好みが違うことも新鮮だった。
けれど……きっと孝治はそうじゃなかったんだろうな。



