隠れ御曹司の愛に絡めとられて


「……別れた」

「うん、私と孝治は別れたね。孝治が会社の後輩の女の子と浮気して、挙げ句の果てに子供まで作って、私を振ったもんね。知ってるけど……?」

「いやそうじゃなくて……」


もごもごと何かを言いたそうにしながら言い淀む孝治に、ますますイライラしてしまう。

お腹空いてるからかなぁ?

だって、まだから揚げを一個食べただけだし。

たいした話じゃないなら帰ってもらっていいかな、お弁当の続きを食べたいから――と言おうと口を開いたところで、孝治の声に遮られ口をつぐむ。


「あのさ」

「……なに?」

「俺、あいつと……ユミと別れた」

「……はぁ?」

「あいつさ……他の男と俺と二股かけてて……俺との子供って言ってたけど、本当はそいつとの子だって……」

「……ふぅん」

「いや、ふーん、って……」

「他になんて言えば良いのよ? 私には関係のない話でしょ?」

「それはまぁ、そうだけど……」