その次の瞬間すみれは自然と屋上から飛び降りた。


ここの学校の屋上は地上5階。


もろに落ちたら即死レベルだ。


屋上から落ちながらすみれの目に映ったのは目を見開いてこっちを見ている井龍様だった。


(早く逃げて。
このままそこにいたら下敷きになって死んじゃいます。
私のせいで好きな人に死んでほしくない。)


そう願っているのに、井龍様は一向に逃げようとしない。


そして、ぶつかる!っと思った瞬間、井龍様が受け止めようとするような体制をとった。


(えっ?)


衝撃が来ると思ったら、フワッと浮遊感がすみれを襲った。


次の瞬間井龍様の腕の中にいた。


その状況を理解したすみれは一気に赤面する。


そう。


これは、いわゆるお姫様抱っこである。


「大丈夫?」


「は、はい...」


死にたかったのに、こんなことになったら生きててよかったと思ってしまう。


単純な私に涙が出る。


「えぇっ?」


「ど、どうしたの」


心配させてしまった。


「どうして自殺なんかしようとしたのか教えてくれる?」


一応聞いてはいるが、声には言いようもない威圧感があった。


ここは頷かなくてはならないと本能的に思った。


コクコク


ニコッ


爽やかな笑顔を浮かべながら井龍様は私を連れて歩き出した。


「それと、どんなことでも守ってあげるから嘘はつかないでね。」


『守ってあげる』


その言葉で救われた気がした。