「ナナミ!」

「…」

O駅のロータリーで、ナナミがその声に振り返ると…。
彼女の眼には元クラスメートの夏子と秋子が映っていた。

”夏子と秋子…”

ナナミは、二人の名をすぐには声に出すことができなかった。
この二人は深浦総合に在学中、完全にナナミをシカトし続けていたのだ。

「ナナミー、まず謝るわ。私たち…、あなたのことずっとシカトしてて…。ごめんね」

「私も謝る。あなたと口をきいたら、みんなから自分がいじめられるから、それが怖くて…。ごめんなさい、本当に…」

「…」

二人は既に涙を浮かべていた…。
秋の夕方…、辺りは暗くなり始めていたが、ナナミの心は明るかった。

”信じられない…!なんで今頃になってみんな優しくしてくれるのよ…”

ナナミはなぜ、転向した後、皆が優しくしてくれるのか不思議だった。
だが、その理由を夏子と秋子の口から聞いて、まさに青天の霹靂の心境となる。


***


「私たちだけじゃなくてさ、みんな、あなたをいじめてた立場だったから、開けずの手紙はナナミが絶対って思ってたのよ。だけど、100人近く自殺者が出ても、ナナミは今も生きてる。それは、あなたがあの手紙を送ったってことじゃない証拠になるんだもん」

「そうなのよ。だからあなたがもし、誰かに手紙を送られて自らこの世を去る直前に私たちをターゲットにされたら大変だから、機会を見てナナミとは仲直りしときたかったの…」

”な~るほど…❕人間の心理ってそんなもんかもねー。この二人は、99人枠を他の奴らと最後の最後まで競り合ったのよね、実際…(笑)。時期、まだら膨れに招待するつもりだったのにさー。まあ、黒い腹は見えたけど、ここまで馬鹿正直に告白されちゃったらねー。しばらく、まだら行きは免除してあげるわ”


***


「…一昨日もさ、1年F組の松川アイが死んじゃったのよ。手首切って。私たち二人は彼女と事前に話通しておいたから、こっちに手紙はないと思うけど…。もう、そんなの沢山よ!」

「私も転校したいわ。毎日、人に会うたび、仲良くする宣言してたんじゃ、楽しいこと何もできないよ。とにかく私たち二人は、あなたとの過去は水ってことでお願いよ。お互い、手紙を受け取っても次の使命は外す。頼むわよ!」

二人は再三、念押しして、ソソクサとナナミから去って行った。

久留田ナナミは”あれ”以来、生きる世界が変わった。
そして、その目に映る姿、世界も…。