北九州市某区に暮らす高校2年生の久留田ナナミの元に、”その手紙”が届いたのは、3か月ちょっと前のことだった。

男女共学の私立高校に通うナナミは、入学以来、男女生徒を問わず周りから、すさまじいばかりのいじめ・仲間はずし・中傷行為を組織的に受けていたのだ。

2年に進級してクラス替えもあったことで、彼女も心機一転、友人関係の好転を期待していたが…。
それは春先早々、桜の花びらと共に散った。
ものの見事に…。

夏前には、女子間で性的な嫌がらせを繰り返され、いじめの中身もエスカレートの一途を辿って、もはや2学期が始まる前には自殺を決意…。
毎日、ネットで”その手”のサイトを巡り続けていた。

そんな折、自殺関連のキーワード検索で、自殺を強いる呪いの手紙…、”開けずの手紙”による百夜殺しの”ウワサ”を知り得る…。


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”神様…、どうか、私に開けずの手紙が届きますように…❣”

以来、受動的に自殺のレールに乗ることが叶い、なおかつ、なんと最大で99人に自殺の強要という呪いを”うつす”ことができる、ナナミにとってはまさに夢のプラチナ級とも言える招待状たる”開けずの手紙”を待ち望む日々が始まった…。

そして、もともと”筋金入り”のいじめられっ子として北九州ではその名を馳せていた(?)ナナミだけに、その屈折した願望はすんなりと実現のものとなる。

彼女は跳ね上がって狂喜し、自宅に届いた”開けず手紙”を開封…。
かくして、その翌夜から、ナナミが殺され続ける”百夜殺し”日はスタートした。


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だが…、彼女に迷いなど当初から皆無だった。

”私は私をいじめた人間を最大限、道づれにしちゃるわ。なら、99人よ!どうせ私は毎晩のように、この世から消えることを願っとったんだもの。目標ができたからには、断固99人よ‼”

かくして久留田ナナミは殺され続け、ついに昨夜、99回目の惨殺を”無事”終えたのだった。

通常なら、呪いを排除するため、あと一晩耐えてということを目指すのであるが…、ナナミの場合は全く違った。
彼女はあと1夜耐え、呪いから解放されて生き続けようという気持ちきなど、さらさら持ち合わせていなかったのだ。

この日、彼女はなんら迷うことなく、99人への”スペシャルラブレター”発送を済ませると、かねてから目星をつけていた雑木林で首を括る為、胸を躍らせて死地の門出に赴いた…。

”私の敬愛、憧憬する呪い主様…、どうか99人へ特段の呪いをかけてやって下さい。こんなステキな手紙を生みだしてくれて、心から感謝しています。いえ、愛しています❣あの世で会えたら幸せです…💛”

午前10時ジャスト…。
久留田ナナミは大木に首を括った…。