生まれながらの変質的な凶暴性はもう止められない…‼
サティックな素行を抑えきれない猟奇な姉…、実の妹は彼女の恐ろしい本性を見抜いていた⁉




決意①



私の決意は本物だったよ

もう、やるしかない

今しかないんだってば!


***


その日、お姉ちゃんが帰ってきたのは夜7時だった

両手には景品をいっぱい手にしてた

どうやら一日中、パチンコだかスロットルだかをやってたらしいや

でも、機嫌はよかったのでほっとしたけど…


***


で…、お姉ちゃん、裸足じゃないんだけど…

そしたら…

夕食時、お姉ちゃんがおもむろに言い出した

「裸足、やめたわ。ガラス踏んじゃったらさ、ツグミを殺さなきゃならないし…。さすがにかわいい妹は手に掛けたくないしな」

まあ、ありがたいお言葉ではあるが…

まるでギャングの口っぷりでしょ、これって…


***


「ツグミ…、お前は私のことを誰よりも理解してるだろうから言うが、今のお姉ちゃん、カッとなったら人殺しちゃうわ。この前、例の柴犬殺ったら凄い快感だったんだ。今度は機会があったら人間を殺りたくなったよ。本格的に…」

「…」

ついに出たかって感じだった

でも、いきなりなんで、言葉なんか出なかったよ

「…そうはいってもねー、いくら私でもモチベーションが十分じゃないとね~~。下手したら死刑だもん。それなりに納得したシュチエーションは必要だわな」

何て理論だてなんだ…!

殺人の実行にモチベーションもシュチエーションもあるのかっての!


***


決意②



お姉ちゃんがなぜこのタイミングでこの告白なのか…

よく考えないと…

単なる気分からじゃない気がする


***


「お前さあ…、私がそろそろ人を殺すんじゃないかと察してるんだろう?どうなのよ」

来たー

「私はずっとお姉ちゃんと一緒だったもん。お姉ちゃんの心の中は全部わかるって」

「なら、お姉ちゃんもかわいい妹のツグミの心の中、全部わかってても不思議じゃないわな」

私は既にハラを据えていた

私の心の中全部、この女に知れていたら完全アウトだし

「お互いに、よくわかってるってことでしょ。でも、私はお姉ちゃんが恐いから口に出せないことはいっぱいある。それは仕方ないでしょ?」

「ああ、そうだな。…じゃあ、口に出さないこと聞きだしてやるか、ここで一つ…」

下手したら、ここで命が終わるかも、私…

とにかくお姉ちゃんお次の言葉次第だ


***


「お前さあ…、パパとママ、私が殺したかもしれないって、ずっと疑ってきたんだろう?」

もう全身が震え、心臓は飛び出しそうなくらいバクバクだった

何て答えればいいんだ…


***


決意③



「どうなんだ?」

「…疑ってた。ずっと…」

言ってしまった…

ついに!


***


「…違うよ。私はどっちも殺してない。パパは事故、ママは自殺。これは間違いないんだ。ただね…」

”ただ…”は気になったが、とりあえずお姉ちゃん自身の口から”殺してない”の一言が出たのは単純に安心した

そして嬉しくて、感謝した 

お姉ちゃんに…

何か変な感覚ではあるけど…

では、あったけど‼


***


「ただ…、なあに、お姉ちゃん…」

「殺したいとは思ってた。後からのパパの方は殺すつもりまで行ってたかな」

「!!!」

「私が子供の時分でも怒られた時は、”殺してやる!”って気持ちが燃え上がってたんだよ。凄い勢いで。でもねー、やっぱ、子供んときはその手段も持ち合わせてなかったし、体力も親にはかなわないから、実行できなかった。まあ、そんなとこだ」

「大人になってたら、やってたってこと?」

「やってた可能性は高かった。そうとしか言えないよ」

「わかった…」

凄いショックだったし、まともな人間の会話じゃないが、何しろ冷静にお姉ちゃんが話してくれてるのに、妙にほっとしたのは事実だったよ


***


「さて…、もうひとつだ。中2になったお前なら、なんでお姉ちゃんがこんなに人の恨みを買っていっぱい裁判抱えてるのか、わかってるんじゃないのか?」

「言ってもいいの?」

「言ってみな」

「怒らない?」

「ああ、絶対に怒らない」

私は決心して、心に思うままを話すことにしたんだ…


***




決意④



「裁判相手を挑発して、お姉ちゃんを殺そうするまでの相手を探してる…。そしてお姉ちゃんはその向かってくる相手をぶっ殺す。私はそう思っているんだけど」

「ハハハ…。ビンゴじゃん、ツグミ。さすが、かわいい妹だ」

「お姉ちゃん、私もひとつ聞きたいんだけど」

「いいよ」

「私のこと、本当にかわいいと思ってくれてるの?そうだとすればなぜ…?」

「お前はイカレたお姉ちゃんと、ずっと一緒に居てくれたからだ。血が繋がってるってことは、そんなに関係ないんだ、私には。お前じゃなかったら、一緒に住んでても私が最初にぶっ殺す相手になってたと思うよ」

こんなイカレた説明、お姉ちゃんは”大真面目”でしてくれてた


***


「いいか、ツグミ…。今私が言ったこと、もう2度は言わないぞ。お前はお姉ちゃんのことを、私がお前のこと知ってるよりも、よく知ってる。”それ”でちゃんと判断しな」

「お姉ちゃん…」

「正直、もう裁判ネタを故意に起こす気はない。今回が最後だ。今その意味、よく考えるんだ、ツグミ…」

「それならもうひとつ聞く。…今回の相手が最後なら、その人にはお姉ちゃんが選ぶ理由があったんだね」

「そうだよ。桜木正樹っていうターゲットのことは事前に調べがついていて、以前からマークしてた。理解できたみたいだな、ツグミ…」

お姉ちゃんは平静だったが、鋭い目つきしてたよ

ここでお姉ちゃんとの、最初で最後の本音の話し合いは終わった


***


ああ…、もう完全に確信犯だよ

お姉ちゃんが目をつけてたの…、正樹さんじゃなくて、弟のケンだったのか…‼

そして理由は、私の体を”いたずら”した同級生の男子だって、学校側から聞いてたこと…?

ううん違う…‼

お姉ちゃんは、このことを私の作り話だって知ってるんだよ

最初から…!


***


で、もう一つ…、これは今確信できたことだよ

お姉ちゃん、桜木ケンに関心を持ってるって‼

あの女にカンシン持たれたら、ヤバいって

その結論に達した瞬間、私の全身には、寒さと一緒に汗がにじんできたよ

あの女…、全部知ってる…

ケンが私への思いやりから、性的いたずらの汚名を背負ったってことも?

だとしたら…

やっぱ、ヤバいって、本格的に!

私はこの後、家を出る決心をした






ー本話完ー



このエピソードは巻末の『一人目再登場』でアップします(^^♪