「真白くんっ!」



昇降口、靴を履き替えようとした私の耳に届いた弾けるような高い声。
好きな人を名前で呼ぶその声に、呼ばれたわけではない私も思わず振り返った。


けれど当然にそこに誰かいるわけもなく、代わりに柱の影に誰かいることと、スカートが揺れたのが見えた。


……あぁ、なるほど。そういうことか。


今の状況を理解する無駄に速い思考回路。


おそらく。

靴を履き替えるために一瞬離れた私と郡くん。その一瞬で郡くんが女の子に声をかけられている、今はそんな状況だ。


なぜだか後ろめたくなって、私がいることバレないように靴箱の影に隠れたりして。

隠れる必要は全くないのに、郡くんの隣にいる自信のなさの表れだ。