……今、言わなきゃ。

今言わないと、もう二度と郡くんとは話せない気がしたから。


帰ろうと踵を返そうとする郡くんを、彼の言葉を遮ってまで引き止めた。


考えるよりも先に声が出たのは生まれて初めてだった。

今までは考えて考えて考えすぎて、誰とも話せずにいたから。


思わずぎゅっと掴んだ袖には力が入らない。
振り解かれたらどうしようと今更ながら考えてしまって顔を見れない。


震える、手が震える。

引き止めてしまった以上何か言わなきゃなのに、もう勝手に体は動いてくれない。




「……行かないで、郡くん」





行かないで、ほしかったから。

行かないでほしかったから、考えてから口にした。


今、郡くんはどう思っているだろう。

どんな顔をしているだろう。



怖くて、見れない。