愛しい人が自分を想ってくれている言葉に、心が震えた。胸がどうしようもなく高鳴った。

敏生も、今夜のことは一生忘れられないだろうと思った。


そのとき、再び敏生の額に、柔らかい感触があった。また、結乃が汗を拭ってくれているのだろう。


「ふふ……よく眠ってる。芹沢くんが起きてたらこんなこと、緊張するし、恥ずかしくて、とても言えないもんね……」


その優しい囁きを聞いて、敏生は思った。
今、きっと結乃は自分を見つめてくれている。自分が結乃を〝好きだ〟と思うのと同じような想いを込めて……。

今まで敏生が生きてきた中で、こんなにも幸せなひと時があっただろうか。


いつしか花火の音も聞こえなくなっていた。
花火大会も終わり、雑踏のざわめきも落ち着き始めている。

夜が更けていく。遅くなりすぎる前に、結乃を送り届けなければならない。

だけど、もう少しこのまま目を閉じて……、この幸せな時間を味わっていたいと、敏生は思った。





      — 第6話 完 —

       2023.2.28





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