その風が規則的な頻度で届けられることに気づいて、敏生はうっすらと目を開いて確かめる。すると、結乃が小さな扇子で扇いでくれていた。

それと、優しい風とともに敏生を包み込むこの香り……。


——ああ、夢の中のあの雲の匂いは、片桐さんの匂いだったんだ……。


敏生は、さっきまで見ていた夢の中にいるような感覚になった。頭は結乃の柔らかい膝の上にあって、ふわりと本当に雲の中を漂っているような気持ちよさだった。

でも、結乃はずっと敏生の頭の重さに耐えている。早く起き上がるべきだということは敏生も分かってはいるけれど、このままずっとこうしていたいと思わずにはいられなかった。


木々の枝の間に見える花火から膝の上の敏生の顔へと、結乃が視線を移す。敏生はその気配を察して、目をしっかりと閉じ規則的な呼吸をすることに努めた。

柔らかい感触が敏生の額から頬、顎へと移っていく。おそらく、結乃がハンカチで汗を拭ってくれているのだろう。

ということは、今結乃はずっと敏生を見つめ続けているということだ。