見上げるところは自分の部屋の天井ではなく、木々の枝に縁取られた夜空。そこにキラキラしながら舞う色とりどりの光。そして、それを見上げている結乃。


——え?どういうことだ?


敏生は、まだ夢を見ているのかと思いながらも、思考を巡らす。
それから、徐々に思い出す。自分が酒に酔って醜態を晒してしまったことを——。


青ざめながら、もう一度状況を確認する。


——この角度で、片桐さんが見えるということは……。


敏生は密かに息を呑んだ。
自分の頭が結乃の太ももの上に置かれている!!


——……どっ、どうしてこんなことになってるんだ?!


訳が分からず、敏生の頭の中はパニックになった。ドキンドキンと心臓が口から飛び出してきそうなほど鼓動を打って、体は結乃に膝枕をされたまま硬直する。

目を閉じ、まだ眠ったふりをしたまま、敏生はこれから自分がどんなふうに目覚め、どんなふうに起き上がるのがベストなのかを考えた。でも、パニックになった思考は上滑りばかりして、何も導き出せない。


そのとき、ふわりと柔らかい風が吹く。夏の夜の蒸し暑さに加え、酒に酔って熱った体には、とても心地良い風だった。