「大丈夫。私にもたれて。こっちのベンチに一旦座って」
結乃は敏生の腕を自分の肩にかけて背中に手を回し、ゆっくり歩くと、ちょうど空いていたベンチに敏生を座らせた。この公園の中は木々に阻まれて花火がよく見えず、人気もほとんどなかったのが幸いした。
「さっきも川本先輩にずいぶん飲まされてたみたいだったから……」
ベンチの隣に座った結乃が、俯いて頭を抱える敏生の背中をさすってくれる。
こんなにも結乃が近くにいて触れてくれてるのに、敏生にはときめきを感じる余裕もなかった。
何か言って取り繕いたいとは思っていたけど、脈拍に合わせて頭に痛みのくさびが打たれるばかりだ。
「…そうだ、お水。私、買ってくるからここで待ってて?」
そう言って、結乃がベンチを立つ。
——…一人で行ったら、危ないよ。
そう思って、敏生は声をかけようとしたけれど、散々吐いた後の喉は涸れていて、声が出てこない。そうしている間にも結乃は駆け出し、公園を出て行ってしまった。
頭上では、大きな音とともに色とりどりの花火が打ち上げられている。だけど、今はとても花火を見るどころじゃない。



