「なんだ?なんだ?来たばかりなのに、いい雰囲気じゃない?やっぱり芹沢くんは、隅に置けないねぇ」


テーブルをはさんで向かいのソファーに座る鳥山がニヤニヤしながら、敏生と川本の様子をからかった。
その鳥山のソファーの背もたれに載せられてる片腕が、まるで結乃の肩に回されているように見える。


——鳥山ぁ〜、俺が来たからには、片桐さんには絶対に手出しさせねーからな!


心の中で戦いを挑みながら、敏生は鳥山を涼しい顔で一瞥した。


「あの、私も川本さんと同じ総務2課の小池ななみです」

「同じく総務2課の花田里帆です。よろしくお願いします」


あとの女子二人も、敏生と知り合いになれる絶好の機会を逃すまいと、次々に自己紹介をする。
流れでいけば次は結乃の番で、自然と皆の視線が集まった。しかし結乃は、今さら自己紹介をするべきか迷って言いよどんでしまう。


「片桐さんとは高校が一緒だったから、もうすでに知ってる仲です」


すると、敏生の方からその事実を皆に知らしめた。


「ええっ!!」


と、一同は声をあげる。

会社では知る人ぞ知るエースの敏生と、総務で地味な仕事をしている結乃とに接点があったなんて、誰もが思いも寄らなかったのだろう。