「おーい。磯田さん、男子が苦手らしいからあんまり見ないであげて!それから女子、もっと話しかけて!」

え……?

最初はクラスの子達は戸惑っているみたいだったけど、ある女の子の行動でその空気はなくなる。

「磯田さん、私鎌田ひまり。遥って呼んでいい?私もひまりでいいよ!」

そう言って話しかけてくれたのは、姫カットがよく似合っている芯の強そうな女の子だった。

「うんっ!ありがとう、ひまりちゃん!」

「総務と仲良くなったら俺はもうお役御免かな?」

伊藤くんが両手を上げて立ち上がると、ひまりちゃんが勢いよく伊藤くんの襟を掴んで引き止める。

「ダメよ。私、体弱いからすぐに休んじゃうし、私がいないときはよろしくね」

え……?

体が弱いって……何かの病気、とかなのかな……?

「ひまりちゃん、大丈夫なの?」

心配になって恐る恐るそう聞いてみると、ひまりちゃんは満面の笑みで親指を立てて私に向ける。

「うん!今は大丈夫。体弱いって言っても喘息持ちなだけだから」

「そうなの……?」

私の言葉に頷いたひまりちゃんに続いて、伊藤くんも思い出したように声を上げる。

「そういやそうだったな」

伊藤くんもひまりちゃんの喘息のことは知っているみたい。

「ってことでよろしくね!まあ、今日のところは私が遥といるから伊藤は帰っていいよ?」

「え、まじ!俺帰っていいの?じゃあ帰る、じゃな!」