思ったより冷たい水滴に、拭くように頬を撫でた。



帰る度に玄関まで来てくれて『おかえりなさい』と、笑顔を見せてくれる。


一緒にテレビを見るとか、「おはよう」って言いなが目をこすってる姿とか、そんな些細なことが幸せで。



一緒にいる時間が長くなって、陽葵のことをもっと好きになった。


……それに伴って“触れたい”という気持ちも大きくなった。



「はぁ〜」


下を向くと、髪の毛からポタポタ雫が落ちていく。




欲望のまま触れるとか死んでも嫌だ。

でも俺の理性が保てるかどうか……。


あの時の陽葵の声、甘くなってたんだよなぁ。



「はぁぁぁ」


情けないくらいため息が出る。