ローブを羽織り、バスルームを出る。見るとベッドの横にある小さな応接テーブルにルームサービスの朝食が乗っている。
 それを取っていると亮ちゃんがベッドルームへ入ってきた。

 「雫、おはよう。身体大丈夫か?」
 「うん。大丈夫。お客様だったの?」
 ベッドに腰掛けると亮ちゃんは話し出した。

 「ああ、昨日パーティーであった、同級生。どうしても取引したいと言っていて、よく話してみたら起業したらしい。あいつも親が会社経営者なんだが、自分の会社を作ったらしくて。システム関係なんだが、セキュリティなどを専門にしている。非常に頭のいい奴だったから話を聞いてみようと思ってね。あいつ以外にも仕事の話で昨日からメールや電話が来てさ。実は俺もいずれ起業するかもしれないから話を聞きたいんだ。」
 驚くようなことをさらっと言う。
 
 「起業?今の会社を辞めて?」
 亮ちゃんは真面目な顔をして私をじっと見つめながら話し出した。

 「ああ。実は前から考えていないわけでもなかった。この会社はどちらにしても叔父一族のものだ。専務がいる限り、俺のやりたいようにはできない。今回色々話をもらったので、本気で考えていこうかと実は思っているんだ。」

 「……驚いた。こちらで起業するの?」

 「いや、まだわからない。日本で始めた仕事も面白いし、部下もいるので勝手なことはできない。ただ、起業しやすいのはアメリカかもしれないな。人脈があるので。今の時代、どこで起業してもやっていけるから、日本でも大丈夫だけど。」

 亮ちゃんは私の横に座ると、手を握り話し続けた。

 「雫。心配いらないから。今後どうなろうとも雫と相談してから起業する。雫の意見も尊重するし子育ての問題もある。教育環境も考えないといけないし、雫の仕事のこともある。まだ、先のことだよ。頭の隅に入れておいてくれればいいから。」

 私は亮ちゃんの目を見てハッキリ返事をした。

 「私は亮ちゃんについていきます。アメリカに行くならついて行く。一緒にいる。それだけは覚えておいて。私の仕事のことは後で考えてもいいけど、アメリカに行くなら今のアメリカ支社でもいいけど、出来るならあなたの会社で雇ってちょうだい。」

 「雫。君と結婚して良かった。本当に素晴らしい女性だな、君は。相手の気持ちをすぐに理解して言葉を選ぶ。そして、何より俺のやりたいことを応援してくれる。あー、幸せってこういうことを言うんだろうな。初めて実感したよ。」

 抱きつく亮ちゃん。
 私も亮ちゃんの背中に手を回し抱きしめた。

 バタンと倒れて、覆い被さってくる。

 「愛してる。」そう言うと、ローブの合わせ目を開いてしまう。

 「あ、あ……」
 探る手にすぐに身体が戻ってしまう。

 身体をよじっているとすぐにまた彼も服を脱ぎ始めた。

 もう止められない。
 これからは心も身体もふたりでひとつ。

 身体はすぐにひとつになった……。