店を出ると、まだ顔色悪いから家までタクシーに乗っていけと言う。
 タクシーを呼ぶと、押し込められ、料金も前払いしてくれる。

 普通なら固辞するところだけど、優しさに飢えていた私はその好意をありがたく頂いた。
 タクシーのドアを閉めて手を振る新田さんに、また連絡すると言われて、頷くしか出来なかった。

 タクシーの中で、久しぶりにアプリを開き、メールを確認した。
 今日は本当に疲れていて、朝一度見たきりだった。

 すると、久しぶりに亮ちゃんから着信が入っていた。
 その後、メールも入っている。
 確認すると、今どこだ?とある。

 家に帰る途中と返信すると、突然携帯が鳴りだした。
 「雫、今どこだ?」
 「どうしたの?だから帰る途中。」

 「駅から歩いてるのか?」
 「ううん、タクシーの中。もうすぐ着くと思う。」

 「……お前の家の斜め前の公園にいる。着いたら話そう。」
 「え?」
 「じゃあ。」そう言って切れた。

 タクシーを降りると、亮ちゃんが疲れた顔でこちらに向かってきた。
 腕を引かれて抱きしめられる。
 
 「はー、久しぶりの雫。ごめんな。会えなくて。」

 ぎゅっと抱きしめられて、身動きひとつとれない。
 「ちょ、ちょっと家の前でやめて。」