「あれ?佐々木さん?外でランチなんて珍しいね?」

「あ、池田君!後で声掛けようと思ってたんだよ、丁度良かった!」

「あーそちらは先輩かな?はじめまして、佐々木さんの同期で営業第二グループの池田です」

池田君が自己紹介して軽く頭を下げると、田中さんが対社外用のキラースマイルを炸裂させて挨拶した。

「こんにちは、システム開発の田中です」

なんだ?新手のボケ?その無駄なキラキラについて突っ込んだ方がいいのか?

面倒だ、とりあえずスルーしよう。

「あー、ほら、この前の飲みに行く約束、今日大丈夫そうだけど、池田君は?」

「俺も大丈夫、じゃあ適当に店予約しとくよ、定時でいい?」

「うん、よろしくー」

そのタイミングで、注文していたカツカレーが運ばれてきた。

「はは、相変わらずガッツリだね」

「まあね、じゃ、また後で」

「お邪魔してすみませんでした、失礼します」

池田君が田中さんに会釈して同僚達のいる席に戻って行く。

「麻友ちゃん、飲みに行くの?」

さっきのキラキラを放出させたままの田中さんが、カツカレーを放置して質問してきた。

「冷めますよ?」

「俺の誘いは断る癖に、池田君とは飲みに行っちゃうんだ」

いつの間にかキラキラが消滅し、ションボリしてる?

「何を拗ねてるんですか?この前飲みに行ったし、今も一緒にご飯食べてるし、私達、超ー仲良しですよ?」

何だろう、面倒臭い、、よく漫画とかに登場する『私と仕事、どっちが大切なの!?』とか言っちゃう系の女の霊が、田中さんに乗り移っているとしか思えない。

「田中さん、疲れてませんか?肩とかダル重じゃないですか?」

「いや、別に」

この前飲み屋に置いて行った五千円を翌日返却されたので、代わりにランチを奢る事になり、こうして田中さんと二人で近くの洋食屋に来ているのだが、、

「彼とは随分仲が良さそうだね」

「そうですね、大学も一緒だし、会社では新しく友達ができなかったので、以前から知ってる彼がいてくれて助かってます」

「俺は友達にもなれないのか、、」

「いや、田中さんは、友達じゃなくて先輩ですよね?」

「俺は恋人でもいいんだけど?」

ダメだ、今日の田中さんは、面倒臭いタイプの女モードだ。

「田中さん、冗談は休み休みにしてくれないと、本当、しんどいです」

「麻友ちゃんが俺にだけ冷たい」

「ほら、早く食べて下さい、まだ時間に余裕があるし、仕事に戻る前にス○バでコーヒーも奢ってあげますから、機嫌を直して?ね?」

やはりお昼はデスクでお弁当が面倒臭くなくていいと、改めて思った。