「森川さん、ご無沙汰しております、本日はよろしくお願いします」

4年振りに会った佐々木は、想像と違って、えらく他人行儀だった。

俺を好きだと言ってくれた佐々木を振ってから、もう4年も経ったのだ。

俺は今更何を期待していたと言うのか、自分のおぞましさに震えつく。

打合せが始まると、以前とは比べ物にならない程成長した佐々木に、本当に驚かされた。

4年と言う月日の長さを、改めて実感する。

打合せ終了後、佐々木は仕事があると言って会社に戻ったが、久し振りだからと田中に誘われ、2人で飲みに行く事になった。

「久し振りの麻友ちゃんはどうでした?」

「ああ、随分成長してたな、驚いたよ」

「森川さん、結婚してないですよね?今、恋人はいます?」

「え?いや、いないけど、、」

「麻友ちゃんもいないんですよ」

「、、、、」

「で、久し振りの麻友ちゃんはどうでした?」

「お前、俺に何を言わせたいんだ?」

「別に、、麻友ちゃんの事好きかどうか、確認しておこうかなって思っただけですよ?」

「何か勘違いしてないか?言っておくが、俺が佐々木を振ったんだぞ?」

「そんな昔の事聞いてませんよ、今はどうなのかって聞いてるんです」

この4年、俺はとにかく必死で仕事を頑張っていた。

休みもほとんどない中で、ひと息ついた瞬間に思い出すのは、何故かいつもあの笑顔だった。

辛いと思った時、あいつも頑張っているだろうかと自分を奮い立たせたのも、一度や二度じゃない。

海外で仕事をすると言う特殊な環境がそうさせたのかもしれないが、その間俺を支えていたのは、間違いなく佐々木だった。

「あー言っておきますけど、俺、半年後に会社辞めて、友達とコンサル会社始める事になってるんです」

「え?そうなのか?」

「はい、それで、数年したら麻友ちゃん引っ張ろうかと思ってます」

「え?」

「さっきの麻友ちゃんを見て、森川さんはどう思いました?」

「まだ粗削りだけど、PMとしての経験を積んだら、絶対化けると思うんですよねー」

「物の見方や考え方のセンス、妙に説得力のある話し方、コンサル向きだって思いません?」

「そうかもしれないな、、」

「それに、俺は麻友ちゃんの事が好きだから、そばに置いときたい」

田中がやけに挑戦的な視線を向けてきた。

「俺はイケメンで優しくて収入だって申し分ない、森川さんがそうやっていつまでもモタモタしてるなら、もう待つのをやめて本気出しちゃいますよ?」

田中と別れた後、俺は、前に佐々木と偶然会った中華屋にいた。

帰国後、新しく家を探す事になった時、あえて前と同じ駅を選んだ理由は、多分佐々木だ。

同じ駅に住んでいればまた偶然会えるかもしれないと、心のどこかで期待していた自分に気付かされる。

完全に思考が乙女じゃないか、恥ずかし過ぎて死ねる。