あれから4年の月日が経ち、私は相変わらず、必死に仕事を頑張っていた。

田中さんの補佐としてプロジェクトリーダーを任されるまでに成長した私は、順調にプロジェクトマネージャーへの道を歩んでいる。

他に変わった事と言えば、池田君が1年前に結婚してパパになり、付き合いが悪くなった位だろうか。

「池田くーん、今日早くあがれそうだから、お家に遊びに行ってもいい?」

「え?駄目だけど?」

「えー!何でそんな意地悪な事言うの?まあいいや、えりちゃんに直接お願いしてみよう」

えりちゃんは池田君の奥さんで、最近、池田君よりえりちゃんとの方が仲良しかもしれない。

「はあ、ひかる君がかわいいから仕事に身が入らなくて困る、責任取ってお嫁さんにしてもらうしかないかも、、」

「いや、年の差が気になり過ぎて、ひかるは絶対あげられない」

「池田君は相変わらず冷たいねー、大丈夫だよ麻友ちゃん、俺がお嫁さんにしてあげるから」

「田中さん、全然大丈夫じゃない、私は田中さんじゃなくて、ひかる君が好きなんです」

「まさか麻友ちゃんが、そんなに赤ちゃん好きだとは思わなかったなー、赤ちゃんが欲しいなら、良ければ俺が手伝うよ?」

「田中さん、それ絶対駄目なやつだ、訴えられちゃう系だ、本当それ、よそで言ったら駄目ですよ?」

「大丈夫、麻友ちゃんにしか言わないから」

「池田君、私もそろそろ訴訟の準備をした方がいいのかな?」

「俺に振らないで?面倒な事に巻き込まれたくないんだ」

「池田君が冷たい!」

「あ、そうそう麻友ちゃん、新規の顧客入ったから、要件定義の打合せ、来週なんだけど確認して予定空けといてね?」

「了解です、はあ、しょうがない、そろそろ戻るかなー、じゃあ池田君、今夜ひかる君に会いに行くから、よろしくねー」

池田君に手を振って休憩所を後にした私は、自分のデスクに戻り、田中さんからのメールを開いて新規案件の詳細を確認する。

「スターク電子、、あれ?、、これって、、」

主任の顔が(よぎ)った。

確か主任の転職先の企業名が、こんな感じだった。

主任は海外から戻っているのだろうか?

いや、戻っていたとしても、きっと主任とは関係のない案件だろう。

田中さん、何も言ってなかったし。

変に期待してがっかりしたくない。

「市場拡大目的の顧客用アプリ開発か」

会社の概要と使えそうな資料をざっと集めて、共有フォルダに入れておく。

参考になりそうなサンプルもいくつかピックアップしておこう。

よし、定時を過ぎたし、そろそろ帰る準備をしなくちゃな。

デパ地下に寄って、美味しいお惣菜とえりちゃんの好きそうなデザートをお土産に買って行こう。

早くしないと、ひかる君と戯れる時間が減ってしまう。